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2009年9月19日〜23日
4泊5日


木曽駒ヶ岳
木曽駒ヶ岳

雲ノ平・日本庭園から見た祖父岳


【ルート】
1日目: 新穂高温泉 わさび平 鏡平 双六小屋(泊)
2日目: 双六小屋 双六岳 三俣蓮華岳(泊)
3日目: 三俣蓮華岳 雲ノ平(泊)
4日目: 雲ノ平 三俣蓮華 双六小屋(泊)
5日目: 双六小屋 鏡平 新穂高温泉
主な山 :双六岳(2,860m)、三俣蓮華岳(2,841m)
行程 :4泊5日
宿泊 :テント
難易度 :★★☆☆☆
お勧め度 :★★★★★

【コース概要】
秘境「雲ノ平」。どこから行っても最低一泊はしないと辿り着けない、正に秘境。周りをなだらかなアルプスの山々に囲まれ、文字通り雲の上に浮かんでいるような錯覚をする。辿り着くコースはそれ程難しくはないが、やはり行く人が限られているので、踏み跡が少なくなっている場所などは、迷いに注意したい。さらに奥地に行けば温泉もあるそうなので、そこにも行って見たい。





(新穂高温泉〜わさび平〜鏡平〜双六)

9月の連休を使って、北アルプスに行く事にした。
選んだ先は初心者でも歩けるという、新穂高温泉から双六小屋へ向うルート。3泊4日の予定だが、可能であれば日本最後の秘境と呼ばれる「雲ノ平」まで行きたい。
でも、まあ今回は初めてのテント泊なので、あまり気張らずに山を楽しみたいと思う。


金曜、仕事を終え、そのまま中央道へ走る。松本ICで降り、158号線を走り、新穂高温泉の無料駐車場に着いたのは午前3時半。ところが、
「駐車場は午前1時半で既に満車になったので、こちらの駐車場に行ってください」
と、小さな紙切れを渡された。指定された場所は「鍋平第二無料駐車場」という場所。その場でUターンし、トンネルを抜けた辺りから左折し、しばらく登る。そこからしばらく走るとあるのだが、正直分かりにくい。

駐車場に着くと既に4時近くになっている。寝ずに走り続けてきたので、とりあえず仮眠。まだ外は真っ暗だ。5時近くになると随分明るくなってきた。少なかった車も、かなり増えてきている。
幸いトイレもあるのでゆっくりと支度をして、5時半、出発する。

ここから新穂高温泉の登山口までロープーウェイを使えるそうだが、5時半ではまだ営業していない。仕方無しに車で来た道をそのまま歩く。1時間かけて、ようやく新穂高温泉に到着。随分疲れた気がするが、ここからが登山の開始だ。


ここを曲がり登ってゆくと鍋平の駐車場 鍋平第二無料駐車場も朝方には満車に



天気は基本は晴れ。ただ山によっては薄雲が掛かっている。でも雨が降るようなことはないだろう。気温は涼しいぐらい。長袖がちょうどいい。
最初はアスファルトで舗装された道を歩く。車も通れる車道だ。まだ朝の光の届かない少し暗い林道を歩く。周りにはたくさんの登山者がいる。中高年の登山ブームを現すかのように、やはり中高年が多い。でも、ゆっくり林道を登っている我々より、速い。バックの大きさから山小屋泊、自分らのテント泊のバックより小さいのだが、それでも中々速いペースで歩いている。というより、どんどん抜かれて行く。やはり「へたれ」なので、まあこんなもんだろう。

それにしてもバックパックが重い。
これまで海外の旅で、いかにバックパックの重量を減らすかを考えてきたが、海外の旅は「なければ現地で調達」ってことがかなりできた。持って行かなくても何とでもなるものだった。
でも、山の旅、特にテント泊ではそれができない。必要な物はすべて自分で持って持ち上げなければならない。衣食住の全てを。楽をするもの贅沢するのも自分次第。今回の重さは19kg。エベレストトレッキングした時が12kgだったから、随分重い。でも、その重さも嫌いじゃない。重ければ重いほど自分を感じることができる。これは海外を旅していた時から、一貫している気持ちだ。

晴れてきた。木々の間から光が差す。アルプスの強い日差しが始まる予感がする。
アスファルトの林道と砂利道を繰り返し、8時ちょうどにわさび平に到着した。まだ始まりだというのに、結構疲れた。もう2時間半歩いているんだから無理もないが。。


登山道入口 最初は歩きやすい林道が続く わさび平小屋(幕営も可能)


一休みを終え、再び歩き出す。
歩けば歩くほどどんどん景色が変わるのがアルプスの楽しいところだ。この短い間でも、結構景色は変化する。川を渡ったり、カール状の山を眺めたり、木々に触れたり。不思議と眠気もなく、快調に足が進む。

やがて登りにさしかかった。ついに始まったという感じだ。結構石がごろごろしている。でもまだ始めなので、軽快に登れる。相当たくさんの人が歩いているようで、石などにもはっきりと人が踏み続けた跡が見られる。道を間違えることはなさそうだ。
木々の間を登ってゆく。登山道は割と狭く、すれ違いをするにはちょっと道を譲らなければならない。それに中高年のツアー登山が非常に多い。大体10人ぐらいのパーティーで歩いているのだが、中にはそれを超える大所帯もあり、すれ違いのがとても大変。それにしても老人登山者って、何であんなに元気なんだろう。

辛い。。
登りが始まってから数時間、ひたすら登っている気がする。へたれなのでかなり多くの人に抜かれたが、それでも結構登ってきているはずだ。周りの高い山との目線も合ってきているし。初日なのでまだ疲れはないが、これが後半にあったらと思うと、ぞっとする。


天気は良い 登り、開始! ツアー客は団体で行動している


12時、ようやくシシウドヶ原なる場所に着く。
景色が良いので、椅子に座って少し休憩。強い日差しと、登ってきた山、そして雄大になりつつある景色が心地よい。干しブドウと水を補給し、再び登る。いい加減、次の山小屋(鏡平)について欲しいのだが、地図を見るとまだ1時間は歩かなければならない。しんどい・・・


9月中旬とあって、山はうっすら紅葉の赤と黄に染まっている。
まだ燃えるような赤色は見当たらないが、色づいた木々の歩くのは何とも気持ちが良い。登りじゃなければ、だが。
ゼイゼイ言いながら歩くこと1時間、木でできたトレイルが現れた。「もしや」、と思って最後の力を振り絞り目の前の坂を登りきると、そこには何とも美しい景色が広がっていた。
鏡平、だ。


山はうっすらと秋化粧を始めている 鏡池


鏡池に穂高などの美しい山々が映しだれる見事な湖。生憎、既に午後になっており山にガスがかかってしまっているが、それでもその美しさは十分に伝わってくる。湖の手前に木でできた舞台のような場所があり、そこに座り込みしばし休憩。多くの人も美しい風景に見入っている。

鏡平小屋はそこから目と鼻の先であった。13時半、到着。
既に昼食の時間を過ぎているので、さっそく昼飯の準備に取り掛かる。メニューは定番のカップラーメン。手早くて、美味しいラーメンが一番だ。
それにしても天気が良い。照りつける強い日差しで腕や首が痛くなるほど、天気が良い。周りで休んでいる人も、「これほどよい天気はなかなかない」と話している。小屋の前にも池(ひょうたん池)があり、そこに北アルプスの美しい山が映り、これを見ながら食事とは、まさに贅沢の極みである。


鏡平小屋から(ひょうたん池)


贅沢の極みと言えば、ここ鏡平で見られる「ビール」と「かき氷」と食べる人達。どちらとも小屋で買う事ができるのだが、このような暑い日には物凄い贅沢品であろう。しかも山の中で。
金銭面でもへたれなので、値段を見て驚き買わなかったが(まだ歩かなきゃならないし)、目的地についてしまえばビールは飲みたいなあ、って正直思った。


最高の天気の下、寛ぐ登山者達 昼食はラーメン そして双六小屋へ出発


改めて再び歩き始める。「歩き始める」、と言うよりは、「登り始める」と言った方がいいかもしれない。小屋を過ぎるとすぐにまた登りとなった。分かってはいるが登りが続く初日は本当に辛い。
でも、周りの景色を見るとそんな疲れも一時吹っ飛ぶ。雄大なアルプスに、今日は槍ヶ岳もよく見える。「もう少しで双六だ。もう少しで双六だ」、と思いひたすら登る。
目の前に大きな山が横たわる。その峰の上を人が歩いている。「ああ、あそこは明日歩く場所なんだなあ・・」などと、ぼんやり考えていたら、しばらくしてその峰へ続く登山道が自分の道とつながっている事に気付いた。どうも今日歩くらしい。もう何も考えずに歩くしかない。

目の前の山を、山腹を這うようにして登り、15時半、弓折分岐に到着した。
もう、いい加減双六はすぐそこだろう、と思い地図で確認すると、まだまだずーっと先にある事を知り、愕然とする。
再び登る。


この辺りから稜線に出る。今日は晴天で風もあまりないが、これで悪天候だったら相当寒い道になるだろう。稜線歩きは、比較的楽だ。もちろん登りもあるが、何といっても平坦な道がある。それだけで随分体には嬉しかった。
でも、正直そろそろ足の感覚がなくなってきている。疲れを感じなくなっているのだ。これは相当歩いている証拠。自分の中で作った限界(へたれなので・・)に近付いている証拠だ。


あの線を登るのか・・・ 槍が見える弓折分岐 稜線上は景色がいい


そして、日も傾き始めた16時50分、ようやく双六小屋に到着した。今日のテント泊の地である。11時間半近く歩いていたことになる。
既に多くのテントが幕営されており、急いで空いたスペースにテントを張る。家で、練習してきたお陰で何とかすぐに張る事が出来たが、フライシートの側面のひもを固定するのを忘れて、夜中大変苦労することになった。

とにかくにも、テントを張りその中で休憩。そして夕食。食事は相棒の担当なので、その間に小屋に行ってテントの受付を済ます(500円/1人)。小屋の中は物凄い人で賑わっていた。さすが連休初日、しかも快晴。宿の人も忙しそうにしていた。
夕食を済ませ、片づけをしていたら既に19時を回っている。周りからは既にいびきが聞こえてくる。他のテントを見ても結構電気が消されている。慌ただしかった日が終わる。


双六テント場




(双六〜双六岳〜三俣蓮華岳〜三俣小屋)

そう言えば台風が来ていた気がする。幸い日本への直撃はなかったようだが、出発前の確認では関東の東を通過するとのことだった。
たぶんその影響だろう、昨夜は一晩中物凄い風に煽られ、そして今朝も風がすごい。まさに台風並みの風だ。今朝、テントが舞っているのが見えた。誰かのテントが飛ばされたのである。最近テントの軽量化が進んでいるが、ペグを外したとたん風に煽られ勢いよく舞ったのだろう。自分も相棒とテントを抑えながらの撤収作業。一つ間違えば「テントが舞う二の舞」になるところだ。

ただし、天気は快晴。依然風が強いものの、まさに台風一過という感じの雲ひとつない晴天だ。
7時半、出発。今日は三俣キャンプ場、調子が良ければ雲ノ平まで行きたい。




という訳で、今日も登り(笑)。小屋横にある丘を登り始めます。
しかし、いい天気だ。雲ひとつない快晴で、怖いぐらい。日差しは強いんだけど、風があるのでそれほど暑くも感じない。そしてこのあたりの景色が良いことったらありゃしない。スケール大きいねえ、北アルプス。
そして、しばらく登ると三俣キャンプ地に向かう分かれ道に出た。ひとつは山の中腹を歩く、「楽ちんコース」。もうひとつは目の前にそびえる双六岳に登ってから向かう、「シンドイコース」。
話し合った結果、何故か「シンドイコース」へ。地図上にある「眺望抜群」との言葉に負けた。


翌日は快晴、でも風が強い・・傾いたテントが見える 美しい山々 シンドイコースはこのまま直進


低い木々と、草、そして大きな岩がたくさん転がる双六岳。最初は大したことなかったのだが、しばらく進むと結構な岩場になった。ちょっと予想以上でびっくり。ただし、その分ゆっくり登るので、疲れはない。怖いが。
冷や冷やしながら目の前の頂に立つ。やったー!
と思ったら、え?まだ先が続く。そして小さな標識に「双六岳⇒」との、記載が。。。偽ピーク。というより完全に本ピークだと思い込んでいた。ああ、あの先にあるのが本当の双六岳か。。まあ、仕方ない。進もう。

荒涼とした道が続く。結構風が強いので草木は生えないのだろうが、何だか不思議な感じだ。
でも、景色はすごい。一時消えていた槍や穂高なんかが良く見える。360度・山、っていう感じだ。景色が良いので、重い足も進む。


双六岳・・・と思っていたのだが。。 登り切った奥に、本当のピークが・・ 双六岳山頂(2,860m)


9時15分、双六岳登頂。
今回の登山ではあまり山頂をハントしないので、ちょっと嬉しかった。2,860m。今回で一番高い場所になる。山頂からの景色は思っていたよりもずっと良かった。新しく野口五郎岳が姿を現し、先の槍や穂高も良く見える。とにかく、「良く見える」ってのが感想だ。写真でお伝えできないのが残念。


双六岳から野口五郎岳を望む


老人ツアーの団体が来たので、先に進むことにした。
ここから先は三俣蓮華岳って場所に向かう事になる。岐阜県と長野県と、富山県との県境らしい。すごい場所だ。
ここからのトレイルは比較的楽になる。やや下っている感があり、足がスイスイ進む。ただし、風が強いので気をつけないと稜線から滑り落ちることになる。

でも景観の良さは抜群。これぞまさに「北アルプスを歩く」って感じだ。
三俣蓮華岳の手前で、急な登りとなる。強い直射日光と登りのきつさで、一気に暑くなる。相棒の体調も少し悪くなり、さらにペースが落ちる。ぞくぞくと老人ツアー客に抜かれて行く。


三俣蓮華岳方面


それでも何とか11時半、三俣蓮華岳山頂に到着(2,841m)。疲れた。。
ここも景色はいいのだが、何せ人が多い。そして多くの人が煙草を吸っている。さすがに灰を捨てる人間はいないが、とにかくあちらこちらでぷかぷかやっており、煙い。こんな山奥まで来て煙たくなるとは。。早めに出発した。


目の前に鷲ヶ岳がそびえたつ。三俣キャンプ場は、この鷲ヶ岳のすぐそばにある。もう少しだ。
12時半、三俣キャンプ場に到着。今日は5時間程度の歩行だったが、なんだか疲れた。暑さのせいもあると思う。何せ今だに雲ひとつない快晴で、直射日光が痛いぐらいだ。

すぐにテントを張る場所を確保し、今度はしっかりとテントを張る。これならどんな強風が来ても飛ばされないぐらいに、しっかり張った。とりあえず休憩。そして飯。
ところで、ここの水場の水はかなり美味い。むちゃくちゃ冷えているというのもあるが、とにかくすうっと喉に通り、嫌な後味もなく飲み込める。水がうまいと感じたのは、随分久しぶりのことだ。しかも無料。帰りもこの水を飲んだが、やはり美味しかった。


三俣蓮華岳(2,841m) 三俣テント場(後ろは鷲ヶ岳) ここの水場は最高!!


それにしても目の前にそびえる鷲ヶ岳が見事だ。百名山らしいので、たくさんの人が登っているのが見える。でも、「正直登りたくない」と思った。あの急坂を見ると、ちょっと萎える。。これを書いている時は「登っておけば良かった」と思うのだけど、その時はその時で事情がある。疲れたから寛ぎたい、立派な理由だろう。
なお、ここの小屋からは槍ヶ岳も美しく見える。あれもいつかは登りたい。


槍ヶ岳


昼食を済ませ、テントの受付を終え、まったりとする。
とにかく気候がよく、水がおいしく、景色がいい。なかなかいいキャンプ場である。ただし、トイレが大変。小屋泊、テント泊関係なく、トイレは小屋にあるトイレを使用する。通常なら問題ないが、今日のような混雑ぶりだとすごいことになる。実際翌朝の大便待ちでは1時間も待たされた。辛い時間であった。

鷲ヶ岳がゆっくりとオレンジに染まってゆく。それともに気温が一気に下がる。昼間はテント内でも暑いぐらいだが、もうこの時間帯だと外にいても寒さを感じる。いくつもの季節が一日に凝縮される、山の面白いところだ。


夕日に染まる鷲ヶ岳



(三俣小屋〜黒部源流〜雲ノ平)

小さな会議が行われた。
議題は「雲ノ平に行くかどうか」、だ。幸い相棒の体調が良くなり、後悔したくないとのことで、3泊4日から4泊5日に変え、秘境「雲ノ平」に向かう事になった。
昨夜は全くと言ってほど風もなく、結構安眠できた。でも、それなりに冷えたので、シュラフとシュラフカバーとの間に結露ができていた。少し濡れている。気になるほどではないが、やはりある程度は仕方ないのだろうか。
朝焼けの撮影を終えて、8時丁度に雲ノ平に向けて出発した。今日も時間には余裕があるので、遅めの出発だ。


鷲ヶ岳の朝


最初は下り。黒部川の源流に向けて歩きだすのだが、このあたりの景色も抜群。まず、今日も快晴。3日続けての快晴だ。昨夜隣の人が、「今日は雲ひとつなくて、山に色気がないね」みたいなことを話していたが、また快晴。でも感謝。
そして、ほんのり紅葉色に色づいてきた木々が美しい。見事である。ときどき止まってはシャッターを切る。幸せの時だ。


紅葉色に染まりつつある


40分ほどで黒部川の源流に到着した。石碑があるだけで何もないのだが、近くに水がたくさん流れているので多分それだろうと思った。
そしてここから雲ノ平へ向けた最後の壁に差し掛かかる。下から見上げると、まるで登山者を拒むような登りだ。でも関係ない。登るのみ。

結構急だった。下から見上げる以上に急である。昨日のような風はなくなったが、結構重い荷物を担いでいるので、バランスを崩すと危ない。場所によっては手を使って三点確保を取らなければならない場所もある。高いところは苦手なんだが、、、、仕方がない。


黒部川源流の碑 これを登るのか・・ 結構急・・


やっとの思いで登ると、そこにはこれまた雄大な景色が広がっていた。
この辺りから雲ノ平の日本庭園が始まる。右手に見える祖父岳の緑と、青空がまた良く映える。比較的なだらかになってきたトレイルをゆっくり歩く。
日本庭園とはよく言ったもので、まさに日本の庭にありそうな小さな松が、たくさん並んで生えている。風を受けて木自体が曲がり、まるでたくさんの盆栽のようにも見える。


雲ノ平・日本庭園から見た祖父岳


祖父岳を回り込むように歩くと、次第に美しい山が姿を現した。
水晶岳である。
日の関係で、水晶岳と青空、赤く染まったナナカマドが美しい。そして、この辺りからは眼下に広がる広大な雲ノ平がすごい。ここが秘境か。最低でも1泊しなければ辿り着くことのできない場所。「ようやく到着したんだ」、という思いが沸いてきた。


水晶岳とナナカマド


11時半、雲ノ平テント場到着。
今日はここでテントを張る。テント場からは雄大な北アルプスの景色が眺められる。ロケーションはこれまでのテント場とは比べ物にならないほどいい。斜面に作られているので、隣り同士がくっつくこともない。「来てよかった」、本当に思える場所である。

とりあえず、メシ。
一日増えた分、毎回のメシの量が少しづつ減ってしまったのだが、行動食を常に摂っているので3食の食事はそれほど沢山は食べない。ラーメンを作って食べる。美味い。体が塩分を欲しているのがよくわかる。


食事後は、テント料金を支払いに雲ノ平小屋まで行く。
でも、この小屋、結構遠い。テント場から約30分ほど掛かる。しかも今は修復工事中で、売店などもない。まあ、その分テント泊の人だけになって静かな登山ができるのだが。


雲ノ平キャンプ場 雰囲気は抜群 そしてこれはテントの中から


木で整備されたトレイルを歩く。
雲ノ平には木のトレイルがよく似合う。「カタ、コト、カタ、コト」とトレッキングシューズの音がトレイルに響く。両側には澄み渡った青空が広がり、地面には秋を感じさせる赤や黄色の絨毯が広がり始めている。「秘境」、と言うにはちょっと大袈裟かもしれないけど、いい場所であることには変わりない。一歩一歩踏みしめるように、雲ノ平を歩く。


雲ノ平を歩く


雲ノ平小屋には修理中だが、スタッフの方がいて受付をしてくれた。
ショベルカーなど大きな重機があり、ヘリで運んできたのだろうかと思うほど吃驚してしまった。使用料金を払い(500円/1人)、来た道を戻る。色々探索してみたい気もあったが、やはりテントでまったりすることにした。少し雲が多目になってきているし、雨が降ったら大変だ。

テント場に戻ると、先程よりテントの数が増えてきている。
やはり人気の場所なんだと改めて思う。ゴロゴロしていると、夕方近くになってきた。夕食を作りにかかるのだが、ここでアクシデント発生。ガスストーブの点火装置が故障してしまった。さらに不運なことに、念の為に持ってきていたライターまでもが故障。全く火のない状態となってしまった。
まずい。。
残りの食糧は日持ちするものばかり(=火が必要)となり、まともに食べられるのはお菓子程度になる。修理を試みるが、へたれなのでもちろん直すことなどできない。
とりあえず、夕飯は隣のテントの方にライターを借りて凌いだが、明日以降どうしようかと悩んでしまった。

食事を終えると、随分雲が出てきた。まさに「雲ノ平」。テントサイトを雲が流れてゆく。


雲に覆われて行く




(雲ノ平〜三俣小屋〜双六小屋)

霧に覆われた雲ノ平
翌朝起きると、雲ノ平は霧に包まれていた。
いや、霧というよりは雲なのかもしれない。とにかく霧と雨の境目の天候。3日続けて快晴だった天候は、4日目にして崩れた。まあこれでも奇跡に近いのだが。

朝食は悲惨であった。
火が使えないので、パンと水のみ。これから歩かなければならない事を考えるとちょっと寂しいのだが、我慢するしかない。そして、テントの撤収。早目に片づけて、出発したい。

と、その時昨晩ライターを借りた人が

「火は大丈夫ですか?」

と聞いてくれた。最悪小屋等で借りようと思っていたので、その旨伝えると、

「どうぞ」

と言って、マッチを一箱くれた。
嬉しかった。助かったと思った。結局、丁重にお礼はしたのだが、名前などは全く聞けず仕舞いであった。
でも、いいと思う。
ここで受けた親切は、いつか必ずどこかの誰かに返そう、そう思った。そうして親切の輪が広がってゆけば、きっとマッチをくれた人も本意だろう、そう思った。
でも、本当に感謝である。


出発。でも先が見えん・・・
さて、改めてテントを片づけ、いざ出発。
今日からは帰りの行軍となる。マイカー利用なので、残念ながら行きと同じルートになってしまうが、そればかりは仕方がない。それにしても、今日の天気。。
雨が降らないだけましだが、ねえ、、なにも見えんぞ、先が。。。

でも、昨日まで歩いてきた道だったので、気持ちは幾分楽だ。道に迷う確率も減る。睡眠もばっちりで体に力が満ちる。朝食はしょぼかったが・・

霧がかかるとこれほどまでに雰囲気が違ってしまうのか・・、帰りの道では常にそんなことを考えていた。視界がないので遠方の風景が見えないのは当たり前だけど、近くの風景まで一変する。木々の色や、トレイルの雰囲気、自身の気持ちの問題もあるだろうが、まるで違う道を歩いているようだ。

随分と軽くはなってきているが、それでもザックは重い。
でも、この思いザックを担いで歩くのが好きだ。へたれなんで30kgとかは無理だろうけど、20kg程度なら何とかなる。この重いザックを担いでヒーヒー言いながら歩くのが好きだ。衣食住、すべてを背負って自分の足だけで歩くのが何とも良い。人それぞれ山にはいろんな楽しみ方があるけど、僕はこの重さが好きだ。
でも、壁のような登りと対面すると、重いザックを投げ捨てたくはなるが・・・

雲ノ平の日本庭園を過ぎ、いよいよ昨日登った急斜面に差し掛かる。
登りが辛いところは、下りも辛い。これはこれまでの経験で分かっている事。とくに岩場も多いこの下りは、今日の雨も重なって危険度が増している。慎重に一歩づつゆっくりと下る。


雰囲気がぐっと変わる なんか三途の川みたい・・ 霧の中でも紅葉は鮮やか


下りではストックが有効だ。
普段は「ストックを使わない派」なのだが、下りだけは使っている。転倒の危険が多いのは下り。安易に足に力が、勢いが付いてしまうためだ。だからストックを使う。ストックを使う事で、足が3本になった感がある。2本より3本の方がより安定する。当たり前だ。右手にストックを、左手は岩や木々をつかんだり、バランスを取ったりもする。これは山の中で自然と覚えた。


先日は好天だった三俣キャンプ場を過ぎ、13時半、今日の宿泊地双六小屋に到着した。
さすが天候が悪化しただけあり、初日のようなにぎわいはなかったが、それでも夕方になるとたくさんの人がテントを張り始めた。
霧と雨で冷えた体を昼食のラーメンで温める。風はないが、天気がやまないので、結局ほとんどをテントの中で過ごした。






(双六小屋〜鏡平〜新穂高温泉)

目が覚めるとテントに雨の当たる音が聞こえた。
まだ雨は降り続いているらしい。昨晩も夜中一度眼が覚めたが、パタパタとテントに雨の当たる音が聞こえていた。今日も気合を入れていかなければならないようだ。テント内で朝食を済ませ、7時前に双六キャンプ場を出発する。今日は初日11時間以上も歩いた道を戻らなければならない。

霧のような雨のようなものが降り続いている。
レインウェアはしっかりしているので体が濡れることはないが、やはり歩行には気を遣う。唯一心配なのがトレッキングシューズ。既に6年以上も使っている古株なのだが、防水機能もないし、靴のソールも擦り減ってしまい、雨天にはむちゃくちゃ滑りやすくなっている。でも、愛着があるのも確かだ。これで屋久島やエベレストトレッキング、富士山などにも登った。いろんな思い出が詰まった靴だ。でも、そろそろ買い替えの時期に来ているのかもしれない。

行きにあれだけ苦労した山道が、帰りはすいすいと歩ける。下りの部分が多いのがその理由だが、それに加え体が「山モード」になっている証拠だろう。昨日も7時間歩いたが、正直まだ歩ける力は残っていた。だから今日も、へたれには珍しく地図上にあるタイム通りに歩いている。


霧掛かった山もいい いい雰囲気だ 苔には曇りがよく似合う


8時半、鏡平に到着。
行きのような美しい風景はなかったが、でも、霧に包まれた山も悪いものじゃない。登山道も良く見ればいい味を出している。それだけ余裕が出てきたのだろうか。

鏡平からわさび平まで一気に下った。正直岩場での下りの連続で、足に負担がかなりあったが、雨のせいでまともに昼食をとれる場所がなくこれは仕方がなかった。わさび平に到着した時には、結構ふらふらであった。
カップラーメンを食べる。今日はまともに食事をしていなかったので、腹に染みた。水場で冷たい水を飲み、活力もでる。
残り一息、何とかいけそうだ。

新穂高温泉には12時半過ぎに到着した。
今日の歩行は約5時間半。これから駐車場に行くのでもうちょっと増えるが、雨の中の岩場の下りのせいで、時間以上に疲れた感がある。
鍋平駐車場には新穂高ロープーウェの第一リフトを使う。正直歩いて行く気力はない。片道300円(乗車券200円+荷物券100円)を払い、ロープーウェイに乗る。そこから約15分ほど歩いて、ようやく駐車場まで戻ってきた。4泊もしたのだが、出発したのがまだついさっきのような気がする。

これからまた長時間車の運転があるのだが、山の興奮が冷めずあまり気にならなかった。
ちなみに高速のSAで食べたカレーとうどんはやはり最高に美味しかった。

また山に行きたい。



データ
安房トンネル 松本から新穂高温泉に向かう158号線途中に通るトンネル。有料(普通車:750円、軽自動車:600円)。
ETCは利用不可。
鍋平第二駐車場 鍋平駐車場をUターンし、トンネルを抜けたあたりで左折。そのまま坂を上り、T字の駐車場の看板を右折。
無料。トイレ、洗面台あり。新穂高登山口までは8時ぐらいからならリフトも使用可能(200円〜300円)。
鏡平小屋 テント幕営は不可。水1L/100円。トイレ100円/1回。ビール(800円)やかき氷(500円)もある。
双六小屋テント場 テント使用料500円/1人。使用料は小屋で払う。水場、トイレは小屋の隣。小屋の中にはテレフォンカード式
公衆電話、ビールやジュースなどがある。テントは約60張り。
三俣小屋テント場 テント使用料500円/1人。使用料は小屋で払う。水場はテントサイト、トイレは小屋の中(大便用が数が
少ない)。水場の水は冷たくてかなり美味しい。小屋にはレストラン、売店があり菓子やカップ麺等を買える。
テントは約70張り。
雲ノ平テント場 テント使用料500円/1人。使用料は30分ほど離れた小屋で支払う。水場、トイレはテントサイトにある。
雰囲気は抜群。テントは約80張り。
ルート所要時間
Day1
鍋平駐車場(05:30)⇒新穂高温泉(06:30)⇒わさび平(08:00)⇒鏡平(13:20)⇒双六小屋(16:50)【11.5h】
Day2
双六小屋(07:20)⇒双六岳(09:15)⇒三俣蓮華岳(11:20)⇒三俣テント場(12:30)【5h】
Day3
三俣テント場(08:00)⇒黒部源流(08:40)⇒雲ノ平(11:20)【3.5h】
Day4
雲ノ平(06:40)⇒三俣テント場(10:10)⇒双六小屋(13:20)【7h】
Day5
双六小屋(07:00)⇒鏡平(08:30)⇒わさび平(11:10)⇒新穂高温泉(13:00)⇒鍋平駐車場(14:00)【7h】





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