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2009年10月10-12日
2泊3日
百名山
鳳凰三山

オベリスク
オベリスク


【ルート】
day1 青木鉱泉 ドンドコ沢 鳳凰小屋(泊)
day2 鳳凰小屋 地蔵岳 観音岳 薬師岳 南御室小屋(泊)
day3 南御室小屋 薬師岳 中道 青木鉱泉
主な山 :地蔵岳(2,764m)、観音岳(2,840m)、薬師岳(2,780m)
行程 :2泊3日
宿泊 :テント
最低気温 :-4度
難易度 :★★★☆☆
お勧め度 :★★★★★

【コース概要】
縦走も周遊もできる有名コース。登山口までのアクセスが少し悪いが、ここから見る富士山は絶景。秋も深くなっていたので素晴らしい雲海に出会うことができた。当然だが、初日の鳳凰小屋までは結構距離がある。テント場も狭いので早めに着きたい。今回の自分のように周遊の場合は、2日目の薬師岳付近にテント場はないので、一度南御室小屋まで下がらなければならない。



今年最後のテント泊に南アルプスの鳳凰三山を選んだ。
選んだ理由はまだ南アルプスは未踏だったことと、それにこのホームページの「南アルプス」って欄がひとつだけ空白だったので一度行ってみようと思ったのである。
ネットで調べているうちにこの鳳凰三山が初級コースと分かってきたのと、それにここからは大好きな富士が見られるとのことも大きな理由である。


下界の気温も随分と低くなり、既に毎朝の気温が20度を下回った10月の3連休、仕事を終えそのまま徹夜で中央道に向かった。徹夜の運転もしばらくできなくなると思うと、少し寂しく思う。
山行きの時の運転は、不思議と眠くならない。しっかりとコーヒーを用意しておいてあるんだが、それもあまり必要ないぐらいだ。

午前2時過ぎ、中央道・韮崎ICを降り、今回の登山口である青木鉱泉へ向かう。サイトに道路案内があったのでそれに従って進むと、意外にもすんなり到着することができた。しかし、道悪過ぎ。普通の乗用車なのでガタガタ道が長く続くと、何かと不安なものだ。
こんな山奥、悪路の先にも拘わらず既に車が何台か止まっている。午前3時。思ったより早く着けたので、そのまま毛布を被って仮眠する。

雨の音で目が覚める。
6時過ぎ。随分と周りは明るくなっていた。しかし、雨が車に当たる音が聞こえる。天気はあまり良くないようだ。天気予報も山の中までは当てにならない。
曇った窓ガラスから外を見てみると、車は既に一杯になっており、レインウェアを着ながら登山の支度をしている人がたくさん見える。
-これでも登るんだ。
そんな風に思いながら朝食を食べていると、幾分雨脚が弱くなってきた。少し迷ったが、空にも青空が見え始めたので、出発することにした。駐車料金を払い、午前7時、ちょっと遅めの出発となった。


駐車場 青木鉱泉 ドンドコ沢入口
青木鉱泉駐車場 青木鉱泉 ドンドコ沢入口


歩き始めてすぐに、沢側と山側の登山道の分かれ道に出た。この時何を寝とぼけていたのか、地図を読み間違えてより時間のかかる山側の登山道を選んでしまった。もちろん間違いではないのだが、人の少ない寂しい道をずっと歩かなければならなくなった。
基本的に登りで、それほど整備された道ではない。山側の道では所々ざれ場となっていたりして、危険な個所もある。それでも気を付けていれば特に問題はない。

9時過ぎに、ようやく沢側からの登山道に合流する地点までたどり着いた。天候は、、正直あまり良くない。ときどき青空も見えるのだが、ほとんどが曇りで、特に山の中腹以上は厚い雲の覆われている。
と、ここで少し降ってきた雨に備えてレインウェアを着ようと思ったのだが、上着はあったのだがズボンがないことに気付いた。雨脚が弱くなったし、行きにドタバタしていたので相棒のザックに入っていると思い、先に進んだのだが、レインウェアなしでアルプス登山など正直危険極まりないものである。

道は結構しんどい。
ネットなどでは初級コースとあったが、正直これは中級でもいいぐらいだ。手を使わなければ登れない登山道がしょっちゅう出てくる。崩落などの危険個所はそれほどないが、急峻な登山道が随分と連なり予想以上で吃驚する。


山側の登山道 道は悪い どんどん悪くなる・・
山側の登山道 道は悪い どんどん悪くなる・・


トンドコ沢コースには、滝が幾つもある。南精進ヶ滝、鳳凰の滝、白糸の滝、五色の滝の4つだ。幾つかの滝は登山道からも良く見えるのだが、中には登山道から数十分も歩かなければ見れないものもある。ここでの情報の為にもすべて見ておこうと思っていたのだが、そんな気持ちは厳しい登りの前にすっかり萎えてしまっていた。
「滝など興味ない」
案内の看板を眺めつつ、ひたすら今日のゴールである鳳凰小屋へ向かう。

それにしても道が悪い。
アルプスなら当たり前なのかもしれないが、へたれである自分には酷い道に見えてしまう。でも進む。進まなきゃ終わらないし、ご老人の登山客もガンガン登っている。いやいや、まあ、すごいこと。


15時を過ぎると結構寒く感じてきた。
午後になって幾分日差しは回復してきたのだが、既に太陽は山腹の奥に沈んでしまい、緩やかだが冷たい風が体温を削ってゆく。
ふと、視界が開けた。足もとには小川が流れ、遠くの方では鋭い岩が点を突き刺している。後でこれがかの有名なオベリスクだと知るのだが、当時はそんな状況もわからずひたすら日の落ちかけた山道を歩く。

16時、ようやく鳳凰小屋に到着した。木々に囲まれているので、遠くからは確認できず、いきなり現れたって感じだ。とにもかくにもようやくこれで休むことができる。疲れた。。


五色滝 景色が開ければもう少し 鳳凰小屋テント場
五色滝 景色が開ければもう少し 鳳凰小屋テント場


うす暗くなりつつあるテント場には、既に多くのテントが張られていた。場所は広くはないが、平坦で設営しやすい。
急いでテントを張り、使用料を払って、夕食を食べる。
あっという間に暗くなってゆく。そして寒さも厳しくなってきたので、眠ることにした。

モンベル(mont-bell) ステラリッジテント 2型 SUYL [1~2人用] 1122283


寒かった。
早朝の気温は−3℃。テントやフライシートに付いた水滴はすべて凍ってしまい、手で払うとバリバリと剥がれ落ちる。持っていた薄手のダウンジャケット等を着こんで寝たが、寝袋の使用(快適)温度が0℃までだったので、これでも少し寒いぐらいだった。

今日はこのまま下山せず、鳳凰三山を縦走して南御室小屋まで行く。本当は薬師小屋で宿泊したいのだが、テント場がないので仕方がない。
という訳で、朝はむちゃくちゃゆっくりしてしまった。寒いというのもあったが、出発は8時半。ほとんどすべてのテントがなくなっていた。

2日目出発。いきなり急坂。折角休んだのに、またすぐに疲れてしまう。
でも今日は誰が見てもわかるような素晴らしき快晴。「晴れ男、見参」って感じだ。と言っても、今日もまた樹林地帯を歩く。そんなに嫌いではないが、景色が全く見えないのが寂しい。
と、思っていたら、ようやく視界が開けた。


テントはほとんどない いきなり登り ようやく景色が開けた
テントはほとんどない いきなり登り。 ようやく景色が開けた


ざれ場である。砂地が山頂まで続き、非常に登り辛い。でも、先が見えているだけまだいい。初日は辛かった。ゴールが見えない中、ひたすら歩く。自分との戦いとはまさにこのことだろう。

ヒーヒー言いながら登り、ふと後ろを振り向くと、そこにはやっと待ち望んだアルプスらしい景色が広がっていた。

こんなに登ってきていたんだ。
毎回毎回思うことである。よくまあ、こんなに登ったんだって。

そしてさらにご褒美が待っていた。
富士である。8月に登ったから約2か月ぶりの富士である。すっかり初冠雪を済ませたらしく、ほんのりと白化粧をしている。しばらく見惚れる。やはり何だかんだ言っても、エベレストを見た後であっても、この富士が山の中で一番美しい。ようやく南アルプスの魅力解放である。


後ろにはアルプスらしい景色が 富士山が姿を現す
後ろにはアルプスらしい景色が 富士山が姿を現す


9時45分、何とか地蔵岳山頂に到着。
ザックを置き、そのままオベリスクに登る。下から見ていたら大した事ないように思えたのだが、完全な岩場であり、三点確保が必要な場所である。高い所が苦手なので、ブルブル震えながらようやく仏様が置いてある場所まで登ってこれた。そしてここからは富士がよく見える。
岩の先端まで登っている人もいたが、自分には無理無理。危なくて登ってられない。


オベリスク 無理やねん 地蔵ヶ原
オベリスク 無理っす。 地蔵ヶ原


地蔵岳で少し休んだ後、そのまま「アカヌケ沢の頭」なる場所まで登り、そして観音岳を目指し稜線歩きが始まる。
今日は快晴ということもあって、オベリスクやそして日本で2番目に高い北岳(3,193m)なんかも良く見える。美しい景色を眺めながらの山行だが、道は決して甘くはない。ここら辺はかなり岩が多く、幾つも乗り越えていかなければならない。そして高低差も結構ある。折角登ったと思ったら、また下り、また登る。
岩の他にも砂地も多く、浜辺の砂のようにさらさらである。不思議な場所だ。

観音岳に登る途中で、突然富士山が見える場所がある。これには驚いた。突然現れるのだから。でも、美しい富士を眺めながら山を登ることができるとは、富士好き冥利に尽きるものである。


アカヌケ沢の頭 歩く人達 さて、登りますか
アカヌケ沢の頭 歩く人達 さて、登りますか


12時半、観音岳山頂に到着。
余りにも景色が良いので、ここで昼食とした。カップ麺なのだが、周りには富士山を始め、南アルプスの山々、そして甲府の盆地、さらには八ヶ岳まで見える。これ以上ない贅沢な景観で、ラーメンを食べる。幸せである。

呑気にゆっくりラーメンを食べていたら、急にガスってきた。昨夜寝袋が結露して濡れてしまっていたので、早目にテント場で干したかったのだが、このペースではまた到着が夕方になってしまう。少し急ぎ目で観音岳を出発した。


観音岳から
観音岳から


鳳凰三山の残りひとつ、薬師岳には13時半に到着した。急いできたのでどんな道だったかあまり記憶にない。ここから少し下った場所に薬師小屋があるのだが、ここでテントを張ることができない。ちなみに明日はまたここまで戻ってきて、この薬師岳から出発地点である青木鉱泉へ向かう。つまりこれから向かう南御室小屋までの道は、明日また登らなければならないのだ。
とぼやいていても仕方がないので、さくさくと先に進む。1時間ほどかけて、南御室小屋に到着。14時半、まだ日はあったが、木々の間なので影になってしまっていた。寝袋は干せそうにない。残念。

ちなみにここには「南アルプスの天然水」という表示があって、その名の通り美味しい水が飲める水場がある。北アルプスの三俣山荘の水には敵わないと思ったが、それでもかなり美味しい部類に入る。水が美味しいのは嬉しいことだ。


薬師岳山頂 イルカ岩 南アルプスの天然水
薬師岳山頂 イルカ岩? 南アルプスの天然水


日が暮れてゆく。
今夜もまた寒い夜がやってきた。



寒かった。
最終日は頑張って5時に早起きして、6時半には撤収できた。それより気温。何と−4℃。最高記録である。本当に寒かった。
昨日下った道を登る。そんなに疲れは感じていないので、結構頑張って登れた。そして、砂払岳に近付いて視界が開け、その時がやってきた。


雲海に浮かぶ富士
雲海に浮かぶ富士


言葉も出ない。こんな世界があったんだと、信じられなくなった。


波立つ富士
波立つ富士


周りからも色んな声が上がっている。でもそんな言葉も耳に入らないほど、夢中になってシャッターを切りまくった。デジカメは有難い。気兼ねなしにシャッターを押せる。

足らないと思った。
初日、二日目、たくさん歩いた。へたれなのに難しい道も歩いた。夜は寒さに震えた。予想外の氷点下に足先も冷たくなっていた。苦労した。少なからず苦労はした。
でも、足らないと思った。
この景色を見れるだけの苦労はしていない。これっぽっちの苦労では、この美しい景色には釣り合わないと思った。この程度の苦労では足らないのだ。
ではなぜこの景色を見ているのか。運が良かったとかそんなものじゃないと思うのだが、それは分からなかった。

だから感謝しよう。
山に感謝しようと思った。
感謝。そう言えば初日の事だが、登山道で帽子を拾い、先に登っていた色んな人に声を掛け、とある中年のおっさんに無事帽子を戻すことができた。おっさんは「どうも」と言って去って行ったが、雲ノ平で受けたマッチのお礼を山で返そうと思い、自分なりに小さなことから始めていた。
こんな程度のことで山がほほ笑んでくれたとは到底思えないのだが、山に感謝しよう、そう思った。

クリック、どうぞ。
パノラマ作りました。クリックどうぞ。



先へ進む。
途中振り返っても、美しいシルエットをした富士が、雲海、まさに海と波の中に佇んでいる。狂ったように写真を撮り続けたのだが、知らず知らずまたシャッターを押している。もうキリがない状態だ。


振り返ると富士が・・ 天気も良い! こんな所を歩いています
振り返ると富士が・・ 天気も良い! こんな所を歩いてます


8時半、再び薬師岳山頂に立つ。今日はまだ時間が早いので、ガスも出ておらず周りの景色も良い。
ほんの少し休憩して、下山の途についた。この山頂から「中道」と呼ばれる樹林道を通って、青木鉱泉まで下る。名残惜しいが、余りもたもたしていると帰宅の時間が遅れてしまう。気持ちを切り替えて、下山を開始する。


最初は雲海に浮かぶ富士山を眺めながらの下山である。贅沢この上ない。

富士を眺めつつ、下山
富士を眺めつつ、下山


しばらくすると樹林地帯に入り、視界がなくなる。ここからは道も悪く、単調な時間が続く。しばらくするとガスってきた。当然である。雲海の中を歩きだしているのだから。道は岩が多く、湿っているためか苔も多い。滑りやすくて危ない。
行きのドンドコ沢と同様、自分との戦いである。まだ下りなだけましだ。

約3時間後、中道登山口に到着。もう足が痛い。
そこからさらに1時間ほど歩いて、ようやく青木鉱泉に戻って来れた。


ガイドブックなどでは「初級」と紹介されていたが、個人的には「中級」でもいいぐらいであった。まだまだ経験が少ないので何とも言えないが、ハイキング気分で登れる場所ではないことは確かである。
南アルプスは初登山であったが、富士好きにはたまらない場所であろうと思う。色んな角度から富士を眺めることができる。美しき雲海はまさにその代表であろう。

南アルプスの鳳凰三山は自宅からはちょっと遠かったが、いずれまた来てみたい場所である。
雲海富士のお陰で評価は、星5つ、かな。




データ
青木鉱泉 有料駐車場あり。750円/1日。場所は分かり辛いが、サイトにある道案内で問題なく来ることができた。もちろん温泉もある。サイトへ。
鳳凰小屋テント場 500円/1人。場所があまり広くないので、早目に着きたい。水、トイレあり。
南御室小屋テント場 500円/1人。「南アルプスの天然水」が楽しめる。水、トイレあり。
ルート所要時間
Day1
青木鉱泉(07:00)⇒五色滝(14:30)⇒鳳凰小屋(泊)(16:00)【9h】
Day2
鳳凰小屋(08:30)⇒地蔵岳(09:45)⇒観音岳(12:30)⇒薬師岳(13:30)⇒南御室小屋(泊)(14:40)【6h】
Day3
南御室小屋(06:30)⇒薬師岳(08:30)⇒青木鉱泉(13:10)【6.5h】





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